1月頃の真冬の非常に寒い季節、そんな中よりによって北海道へ行くには理由がありました。それは「旨い物が食いたい」と一言で片付ける事が出来る程のあっさりとした理由でした。私は食べる事が大好きで特に季節の旬と言う言葉には目がありません。当然ながら北海道には旨いと言わしめるほどの食べ物があるのは寒い地域だから食材が良く育つのは知っており、いつか北海道の函館に行きたいと思っていました。
北海道からは比較的南寄りにある函館市場は、海の幸で捕れたての海鮮料理を食べられる店が並んでいます。食べる事が好きな私は今回の観光場所は函館市場での食べ歩きと決めており、旅行代理店が行っている様なツアーを利用しませんでした。
移動手段のメインは電車であり東京駅から寝台列車に乗り電車内で、ゆったりと一夜を過ごしながら函館まで向かいました。一人旅だったので誰にも気を使う事無く気兼ねなくマイペースで旅行が出来るとは何よりも旅の醍醐味を感じる事となり、函館に到着した時は一目散に市場へ直行しました。
店に入り大好きだったイクラ丼を頼みましたが目の前に丼を出された時はあまりのボリュームに赤々と輝くイクラに目を奪われ見た目からして他の地域よりも旨いと確信が出来る程でした。思った通り口にした瞬間、下の中でイクラの粒が一つ一つ私の舌の上で踊り弾力のある食感でした。
以前に電車で北へ向かい北海道へ入った時に窓の外を見ると雪景色に変わっていたなど、ロマンチックな話を聞いた事がありましたが、残念ながら雪景色はありませんでした。1月で最も寒い季節の中、雪景色の演出を猛烈に期待していただけに本州とさほど変わらない状況であり少し拍子抜け手しまいました。
しかし私の真の目的は旨い物を食べる事これを一途に考えていた為、景色に関しては花より団子の如く落胆度は低かったです。近場でホテルのチェックインを済ませて夕食に夜の函館市場を探し歩いていると若い美人の女性が呼び込みをしていました。綺麗な女性でしたが先程の通り花よりも団子状態の私は料理が旨ければ何でも良いと言いながら店に入りました。
昼はイクラ丼を食べたので今度は他の海鮮類を食べようかと思い、ひとまずイカの刺身を頼みました。すると先程の綺麗な女性が水槽から丸ごと一匹のイカを持ってきたと思ったら素手で私の目の前で捌きました。こんな綺麗な女性がなんとワイルドな調理をしているのかと感心しながらもイカを調理して私も目の前に差し出された時にニコッと笑ってくれた瞬間は少し悪魔に見えてしまいました。
都会暮らしに慣れていた為、交通の便が都会よりも不便だと言うのを忘れていて油断してた事がありました。函館で食べた後に少し電車で食べ物屋さんを見て回ろうとしましたが道中で、ふと降りた所はかなりの田舎で店や民家も殆ど見掛ける事がなく殺風景な場所でした。
駅名は忘れましたが次の電車が来るまでに随分と時間が掛かるそうで真冬の北海道後に長時間寒いのに耐えながら、ただひたすら次の電車が来るのを待っていました。もしこのまま電車が来なければ命が危ないのではと思う程に絶望感が漂い周囲は誰もいないから恐怖に拍車が掛かっていました。
あまりの寒さに地元も人が凍死をしてしまうのをニュースで聞きますが他にも周辺に人が通るのも少ない事もあってか、それも原因の一つではと思える状況です。今日は我が身と言わんばかりにマイナスな事を考えているので尚更怖くなって震えながら駅で待っていて本当に大丈夫なのかと危機感すら出て来ました。しかしそれをよそに次の電車が駅に向かっている音が聞こえた瞬間、不安でいっぱいだった自分にとっての解放感は計り知れない物でした。